2022.11.27

食べる

【生産者インタビュー】江戸時代から続く農家7代目は元芸人⁉「楽しくなきゃ農業じゃない」エンタメ農家に密着!

東京都八王子市にある中西ファーム…別名は「エンタメ農家」。農園のSNSを覗くと「フェスやります」「スタッフの日焼けランキングしてます」「オリジナルキャップ完成」など、農業とは無関係の楽しげな情報ばかり。それもそのはず。農園の跡取りの中西雅季さんはナント元芸人なのです!地域密着で農園を牽引しつつ、農業を楽しむ中西さんに、詳しく話を聞きました。

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元芸人、農家になる!転身の裏側にあった地元愛

訪れたのは、東京都八王子市。田畑が広がるのどかな街の一角に、中西ファームはあります。



今回の主役、中西ファームの中西雅季さんは江戸時代から200年以上続く農家の7代目。

最初から就農を目指していたのかと思いきや、違うそう。



「若い頃は、絶対農業だけはやらないって思ってました。周囲から継ぐんでしょって言われると余計『やらない!』みたいな感じで…農家の子あるあるですね(笑)」(中西さん)

なるほど。では、農業を志す前はどんなことをしていたのでしょうか。

「高校の文化祭で披露した漫才がきっかけで、芸人として活動していたんです」(中西さん)



下積み生活は5年にわたりました。

「都心のボロいアパートに先輩何人かと住んでいました。本当にお笑いが大好きで、頑張っていたんですけど、やっぱり難しかったですね。芸人として限界を感じ始めた頃、地元に帰る度にホッとして。アパートに戻りたくないな…と思ってしまったんです。で、芸人を辞める決断をしました」(中西さん)



「何よりも地元に戻りたい気持ちが強かった」という中西さん。都心から八王子へ戻り、父の一弘さんに気持ちを伝えたそうです。

「代表(父の一弘さん)に、実家に戻らせてくださいとお願いしました。そこから家業のために貢献できることがあれば…という思いで、農園の一番下っ端として就農したんです」(中西さん)



もちろん、今まで農業について学んだことはなく、ゼロからのスタート。やっぱり大変でしたよね?

「就農したのは良いけど何も分からないという(笑)。親がやってるのを見たことがあるから、かぶを洗うことはできる…というレベルでした。とにかく実際に作業しながら、みんなに教えてもらって」(中西さん)



実は、農業に携わるまでは野菜嫌いだったという中西さん。毎日野菜と向き合ううちに、その気持ちも変化したようで…。

「作り手になってから野菜が大好きになりました!収穫体験に参加した子どもたちが苦手な野菜を食べられるようになった…ってよくあるんですけど、まさにその感じですね」(中西さん)

中西ファームが栽培する野菜は、年間約100種類。「おかげさまで苦手な野菜は全部克服しました」と話す中西さん。説得力がすごい!

アイデアと発想で農園を牽引中!

元芸人というだけあって、アイデアマンの中西さん。新しい取り組みを続々と始めています。



「僕が今、力を入れていることは2つ。宅配便と、シャインマスカットの栽培です」(中西さん)

宅配便とは、今年開始した「農家の宅配便」のこと。月に一度、農園で採れた野菜が届くサービスです。


宅配便の野菜は、畑での収穫から24時間以内に契約者に届きます!

「宅配便を始めたきっかけは都心のマルシェに出店したこと。価格が高くても、良いものを求めているお客様がいることを実感してひらめきました。付加価値として、宅配便には野菜のオリジナルレシピを同封し、契約者限定のイベントも月に一度開催しています」(中西さん)

マルシェでの販売を中西ファームの野菜を知ってもらう機会として切り替え、少しずつ契約者を増やしています。



宅配サービスの価格に見合う満足度にしたいと始めたイベントも大好評。

「イベントの参加費用込みで宅配料金を設定し、毎回来ていただけるように工夫しました。初回の9月はシャインマスカット狩りを企画したのですが、皆さんとっても喜んでくれて」(中西さん)


イベントの当日は圃場の見学もOK。自分が食べている野菜が、どんな場所で育つのか知ることができるのもうれしいですね♪

シャインマスカット…!と驚いていると「10月は芋掘りで、11月に掘った芋を焼き芋にします」と、中西さん。これは参加したくなっちゃいます!

「シャインマスカットは、八王子の新しい名産品になるかも、と3年前に始めました。やっと売れるものが収穫できるようになってホッとしています」(中西さん)



農園の看板商品として期待のかかるシャインマスカット。

「来年はもっと収穫できると思うので、楽しみです!」(中西さん)



園主の一弘さんも、「今までのやり方ではなく、雅季らしいやり方で進んでいけばいい」と温かく見守ります。

自分たちが楽しむことが一番大事!

農家ならではのおもしろ投稿があふれるInstagramとTwitterも大注目。毎日更新されていて、ファンも多いそう。

そんなSNSの投稿も、中西さんが担当。更新に力を入れ始めてから、イベントの参加依頼など、声をかけてもらう機会も増えたと言います。


投稿に登場する中西ファーム・主力スタッフの4人!左から伊藤さん、荒井さん、中西さん、高松さん。

「最初はフォロワーも少なかったので、あまり力むことなくワイワイやっちゃおうという感じで投稿してました。だから戦略って全くなくて。楽しんで続けていたら、いつの間にか輪が広がった印象です」(中西さん)

SNSをはじめ「とにかく自分たちが楽しむことを大事にしています」と中西さん。投稿からも和気あいあいと作業している印象を受けますが、いつもこんな感じなんですか?


摘みたてシャインマスカットをスタッフ同士あーん♪「通勤前に笑って元気出ました、なんてコメントをもらった時はやってて良かったと思いました」と中西さん。

「基本そうですね(笑)。昨年うちの農園主催で野菜フェスというイベントを開催したんですが、それも『8/31って野菜の日だし、何かしたいよね』という何気ない会話から生まれたんです。野菜販売はもちろん、ダンスありバンド演奏ありキッチンカーありと、なんでもありの内容でしたが、想像以上の方が来てくれて。盛り上がって嬉しかったですね」(中西さん)

雑談からイベントのアイデアが生まれて、しかも有言実行するなんて…フットワークとチームワークの良さに感動!



「僕だけじゃなくて、スタッフみんなで一緒に考えて、苦労してるからだと思います。スタッフというよりも同志ですね。『農業を盛り上げる』っていう軸を全員持っているから、ぶれずに同じ方向に進めるんだと思います」(中西さん)

最後に中西さんに今後の夢を聞くと「いいものを作り続けるのが基本ですが『皆さんが応援したくなる農家』でいたいです!」と力強い答えが返ってきました。



抜群のチームワークで次々と新しいことを実行していく中西ファーム。彼らの活躍に注目です!



中西ファーム


東京都八王子市で江戸時代から続く農家の7代目中西雅季さんを中心に、4ha(ヘクタール)の農地で年間約100種類の野菜を栽培している農業法人。「みんなが自然に集まり楽しめる農園」を目指し、毎週土日の直売会で販売するほか、マルシェ(農産物などの販売市)にも積極的に参加。レンタルスペース「雑荘」や、野菜料理を味わえる「居酒屋ごこお」の運営など、農業の枠にとらわれない活動も注目を集めている。詳しくは公式SNSをチェック。https://www.instagram.com/nakanishi_farm/?hl=ja

写真/研壁秀俊 取材協力/JA八王子

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