2021.08.08

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農作業管理アプリ「Agrihub(アグリハブ)」を開発しユーザー1万6000人を獲得!農業男子伊藤さんの夢は「新しいもので世界を変えること」

東京都調布市で「伊藤農園 asobibatake」を営む農業男子、伊藤彰一さんは体験農場を毎夏開催するなど、人と農業との関わりを大切にしています。そんな伊藤さん、実はエンジニアの経験を活かして「Agrihub(アグリハブ)」という農作業管理アプリの開発者でもあるんです。アプリ開発の経緯と、伊藤さんが目指す夢を聞きました。



「農家の事務作業をもっと楽に、便利にしたい」誰でも使えるアプリを制作

伊藤さんは、大学で電子工学を専攻し、卒業後はソフトウェア開発会社でシステムエンジニアとして働いていたという経歴の持ち主。

業務用人事・会計ソフトやアプリの開発を行い、4年後に「もっと技術力を高められる小さい会社に行きたい」とIT系のスタートアップ企業に転職。

1年ほどでその会社が大企業に買収されることになったのを機に、2016年、28才のときに就農しました。

 

就農してすぐに伊藤さんは「農家の人はなんでこんな不便なことをしているんだろう」と疑問を抱いたそうです。

「農薬の使用履歴や農業日誌などは手書きで行われていて、それをいちいちファクスで送っている。JAの職員もそれを1枚ずつチェックしていて。それぞれ多大な手間と時間がかかっていました。僕はとにかく不便が嫌なんです。IT業界にいたので、紙とペンもなるべく使いたくない(笑)。ならば、とエクセルを使ってもやっぱり不便。だったら自分も使えるアプリを作ろうと思ったんです」(伊藤さん)

農作業をしながらアプリ開発をはじめ、8ヶ月で「Agrihub(アグリハブ)」が完成しました。


出典:Agrihubホームページ

農薬の検索機能、農薬散布管理、農業日誌、売り上げ管理など、農家のかゆいところに手が届くアプリ(しかも無料!)は大好評で、現在、ユーザー数は1万6000人以上。

さらに「Agrihub」をJAとクラウド上でつなぎ、農薬使用履歴や生産情報をリアルタイムで共有できる「Agrihubクラウド」も今年春に立ち上げ、ビジネス化につなげています。



液体肥料を混ぜるシステムも自作!

子どもの頃から家電が大好きだった伊藤さん。

「ソニーのウォークマンやMDプレーヤー、ガラケーを手にしては、わくわくして、どんなふうに作られているんだろうと想像し、いつか家電製品を作りたいと思っていました」(伊藤さん)



就農してからは、液体肥料を自動で作る機械も自作したそう。

「液体肥料を指定の値で混ぜる作業ってすごく面倒くさいんです。それを自動化できないかと考え、夜な夜なはんだごてを使って作りました」(伊藤さん)



残念ながら、見てもさっぱりわかりませんが、ここにプログラムが書き込まれているそうです。すごい!

さらには、「日射量によって作物に水を与える量を自動調整できるように、センサーもつけました。買うと何百万円もするシステムだと思います」(伊藤さん)



伊藤さんの目で農業を見渡すと、さらに新しいアプリや道具が生まれそうです。



農業をしながら自分の力をつけていきたい

畑で農作業しながら事務作業も畑で完結できる、と大好評の「Agrihub」。伊藤さんも実際に使っています。



「不具合の連絡などはほとんど来ませんが、問い合わせのメールがときどき来るので、その都度、もっと使いやすいようにしよう、とシステムを調整したりしています」(伊藤さん)

昼間は農作業をして、夜は子どもたちが眠ったあとの21時から0時までが、アプリ開発の仕事の時間。



そんな伊藤さんが尊敬する人は、アップル社の故・スティーブ・ジョブズ氏なのだそう。

「僕も彼のように、新しいものを作って世の中を変えたい、という思いがずっとありました」と伊藤さん。

また、働き方の面では、大企業や安定した生活には興味はないと言います。



「安定した場にいると細分化した作業を与えられてしまうから、力がつかないし、新しいこともやりづらい。広い視野も持ちにくいと思うんです。これからも、農業を営みながら自分の力をつけて、新しいことをもっともっとやっていきたいですね」(伊藤さん)






伊藤農園asobibatake

伊藤彰一さん

東京都調布市、京王線仙川駅から徒歩3分、住宅街の中にある農園。400年以上続く農家を継承し2016年に就農。1ヘクタールの農地で年間30品目の野菜を育て、近隣スーパーの直売コーナーで販売する他、学校給食やレストランなどに提供する。毎年夏休みシーズンには「ミニトマト狩り」「枝豆収穫祭」「夏野菜収穫体験」などのイベントを開催して大人気。大学時代に電子工学を専攻し、卒業後はITベンチャーでシステムエンジニアとして人事・会計などの業務ソフトウェアやアプリ開発に携わった。伊藤さんが開発した個人農家向け栽培管理無料アプリ「Agrihub(アグリハブ)」ユーザーは現在1万6000人を超える。
ホームページはhttps://itonouen-sengawa.studio.site/
アグリハブについてはこちら

写真/石塚修平 取材協力/JAマインズ・JA東京中央会

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