2022.10.04

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【脱サラ農家インタビュー】きっかけは1冊の本!IT系会社員が東京で小松菜栽培を始めた!?【前編】

東京都で唯一の郡、西多摩郡にある日の出町は、豊かな自然に包まれた山間の町です。そんな町で、トムズファームを運営するのが野崎智経さん(45歳)。1年を通して栽培する小松菜は、町の学校給食にも使われています。新潟県出身の野崎さんが、やりがいのあるIT企業を辞めて、縁もゆかりもない東京の地で、農業の世界に飛び込んだワケとは?前後編でお届けします。

【脱サラ農家インタビュー】新規就農には東京がおすすめ!?小松菜農家のお仕事ぶり拝見!【後編】

「江戸東京野菜」に魅せられ農業の世界へ



新宿から電車に揺られること2時間半。都会の街並みとは一変した景色が広がる東京都西多摩郡日の出町で、5年前に農業を始めた野崎さん。50a(アール)の畑を使って、ビニールハウスと露地の小松菜を栽培しています。

就農前は、IT企業で携帯アプリの開発ディレクターとして、10数名の部下を束ね、忙しい日々を過ごしていました。そんなある日、会社帰りに立ち寄った書店で1冊の本に出会います。



「それは江戸東京野菜について書かれた書籍『江戸東京野菜 図鑑編』でした。こんな都会の東京にもご当地野菜があり、それを栽培する農家があるんだと驚きを感じました」(野崎さん)

仕事には真面目に取り組んでいたものの、あまりの多忙さにや体や心が疲弊しがちだった野崎さん。30代半ばを過ぎて、これからの生き方を模索していた時期でもあり、東京で就農するという選択肢が頭に浮かびました。

2年間の修業を経て小松菜農家としてスタート



「まずは、都内の農園での農業ボランティアや新規就農に関する情報を集めることに」(野崎さん)

情報収集に訪れた東京都農業会議で知った、新規就農者の団体「東京NEO‐FARMERS」の集まりにも参加。「大変だけど農業はおもしろくて可能性のある仕事」と話す先輩たちの言葉が後押しになり、就農への決意が固まりIT企業を退職。

西多摩郡瑞穂町の農業法人で働きながら農業経営について学びはじめます。



「就農を目指す仲間と出会い、ますますヤル気が沸いてきました。2年が経ったころ、日の出町で畑を借りられることになり、同町の農家でさらに短期で農業技術について学んだ後、独立しました」(野崎さん)



1年を通して栽培できること、競合する農家が日の出町にいなかったこともあり、小松菜を中心にした農業経営をスタートします。

「就農のきっかけとなった本に、江戸生まれの作物と紹介されていたことも小松菜を選んだ理由のひとつです。秋冬で緑の葉を茂らせる植物が少ない時期、ビニールハウスで鮮やかな緑色の小松菜に触れていると元気になれる。小松菜を栽培してよかったですね」(野崎さん)

新規就農にはお金がかかる!資金集めが大事



2年修行を積んだとはいえ、最初は思い通りにいかないことばかり。

「借りた畑は半分が栗畑で整地までに長い時間がかかったり、予定していた販売先が突然ダメになったり、栽培計画が不安で大量出荷の依頼を断ったり、と思った以上に大変でしたね」(野崎さん)



また、施設に機材、光熱費など、新規就農はとにかく費用がかかると言います。

「新規で事業を始めるということなので、開業資金+αのお金を用意しておくことは特に重要。数年は利益がでないと思っていてちょうどいいかもしれませんね」(野崎さん)

気になる小松菜農家の実際の仕事ぶりや1日のスケジュールなどは、後編に続きます。



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トムズファーム

野崎智経(のざき・とものり)さん

東京都西多摩郡日の出町で野菜農園トムズファームを運営。IT系の会社員時代に読んだ『江戸東京野菜 図鑑編』(大竹道茂著)がきっかけとなり、30代半ばで農業の道へ。東京都農業会議などの支援を受けて、農業経営の基礎を学び、平成30年から新規就農する。小松菜を主に、ほうれん草やとうもろこし、大根などの野菜を栽培。東京都の農業生産工程管理(東京GAP)認証も取得して、安全安心な野菜づくりに猛進中。町の学校給食のほか、JAあきがわ秋川ファーマーズセンターやJAあきがわ日の出町ふれあい農産物直売所に出荷している。

写真/石塚修平 取材協力/JAあきがわ

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