埼玉県でお茶・しいたけを生産する「貫井園」の貫井香織さんは、就農して16年目。栽培管理や加工品開発に精を出す日々ですが、お茶・しいたけではない新たな取り組みにも力を注いでいます。それが、「自家製ぶどうでワインを醸造すること」。ワイン造りは、文字通り"まったく畑の違う"事業でしたが、なぜ挑戦しようと思ったのか――そこにはいくつもの「転機」があったと貫井さんは語ります。2022年に商品化を果たすまでの軌跡と、これからの夢を聞きました。
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貫井さんの実家は、お茶としいたけの生産・販売を手がける「貫井園」。貫井園で働きながら、ワイン用のぶどうを育て、オリジナルワインを造り販売をしています。そんな貫井さんですが、実は大学卒業後は、会社員として働いていたそう。
転機1:自分が何をしたいかを見つめ直して脱サラ→就農
貫井さんは貫井園の長女として育ちましたが、大学卒業当初は実家を継ぐ気はなく、都内の採用コンサルティング会社に就職しました。その後、PR会社に転職しましたが、30歳を目前に控えたころ、心境の変化が訪れたといいます。
「勤めていたときは、顧客の取り組みをサポートするのが仕事でした。だからかもしれませんが、自分自身が思いを込めて作ったものを、直接お客様の手に届けられる仕事がしてみたいと思ったんです。実家の農業が、まさしくそれでした」(貫井さん)
貫井さんの実家は、代々続く農家。父の義一さんは、原木しいたけ栽培の第一人者として数々の賞を受賞している。
こうして退職し、実家で就農した貫井さん。貫井園の主力であるお茶やしいたけの栽培技術を身につけながら、販路開拓や加工品開発などを手がけるようになりました。
転機2:感動のワインと出会ってしまった
そんな貫井さんに、またまた転機が訪れます。
「就農して1~2年が経ったころ、たまたま1967年産のボルドーワインを飲む機会があったんです」(貫井さん)
画像/PhotoAC
このワインが、間違いなく貫井さんの人生を変えました。
「わたしが生まれるより前に作られたワインですけど、これがもう驚くほど滑らかな味わいで。ワインって、時間をかけてこんなふうに変化するんだと、それまで気づかなかったワインの魅力に目覚めてしまったんです」(貫井さん)
この目覚めが「いつか自分でワイン用のぶどうを栽培して、ワインを造りたい」という夢につながります。
「漠然とした夢でしたけど」とはいうものの、以降、ワインスクールに通ったり、ワイナリーでのボランティアを体験したりという形で、ワイン道をまい進していきます。
写真提供/貫井園 取材協力/JAいるま野
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